開宴にあたり、新郎新婦のあいさつは「格式ばった披露宴」ではなく、この山荘で楽しく「お食事」を召し上がって下さいという簡単なごあいさつ。次に「カンパイ」をされた後、「シェフ今井」のあいさつとなる。ご列席者50名山荘にとっては大きな食事会である。今までにたくさんの披露宴を手掛けて来たが、このような新郎新婦による「手作りの披露宴」はちょっと勝手が違い、調理場そしてサービススタッフのスタンバイの様子を見ながらの時間稼ぎのあいさつとなる。この山荘を建てた「オーベルジュ」の本当の目的、「今日このような素晴らしい『食事会』のお手伝いができますことを感謝しています。精一杯がんばります」というような話をして食事会のスタートとなる。
食事の合間に新郎新婦が客席を回り出席者方と親しく話をして回る。食事を楽しんでいただくというムードとなり、にぎやかな会食は続けられた。スタートが午後4時30分、お開きが7時30分。一応時間は決めてあったが「たっぷり」とあるのでゆったりとしてサービスをすることができた。新郎の挨拶の中にあった「格式ばらずにお食事を楽しんで下さい」という言葉通 り「おしゃべり」あり「笑い」ありで楽しいムードとなったのである。
デザートコースに入り「デザートのプリンをスプーンですくい、他の冷菓と共に皿に盛り込んで全員に出したい」という新郎の素晴らしいアイデアは、さすがに時間とメインのテーブルがパニックになるので取り止めることになった。司会者のいない、そしてマイクからのにぎやかな話声のない披露宴は、3時間30分をたっぷりとってお開きとなったのである。
残念ながらお泊りできず、用意されたタクシーでお帰りになられた方もおられたが、それぞれの部屋に入られたお客様の楽しい話声はいつまでも続いていたのである。ベランダで夜空を眺めていた方が「静かだな~、山もいいね…」と呟いているのも聞こえて来た。
「手作り披露宴」の明朝のお食事の準備も大変である。フランス料理によるディナーを召し上がった皆様には、明朝のお食事は和食中心のバイキングを楽しんでいただこうと「今井」が作る「おふくろの味」の仕込みが始まるのである。「お幸せ」のスタートとなる「お食事会」をお手伝いできたうれしさは「悔いなき我がコック人生の1ページ」にまた書き加えられたのである。