「ほたる」を見たいというお客様を、夕食後、三倉川上流まで案内する。「ほたるの乱舞」が見られる場所として噂には聞いていたので興味があった。「ほたる」についての下調べをせずに現場に来たのが間違いだったようで、見えない「ほたる」に「こっちの水は甘いぞ」とせつない歌声(?)だけが川原に響く。この声にあわせたように、暗闇の中で「カジカ」が鳴いている。「ほたる」との面 会が果たせぬまま、あきらめて引き返そうとした時に、顔見知りのお菓子問屋の御主人がバイクで通 りかかり、「ほたる」がいないと「がっかり」ムードの一行を見かねて、「もう少し奥の方まで行ってみよう」と道案内をしてくれることになった。支流へと山道を10分程進んで、目的地についた。夏になると、「キャンプ」もできる場所で昼間であれば、景色のすばらしい所であれば、周りは真っ暗やみで何も見えない。一行は、御主人がすすめる橋の中央に集まって、ひたすら「ほたる」の姿を探し続けた。やがて、御主人の言葉が水の流れの音と共に聞こえてきた。「1週間遅かったなー」残念がる一行をなぐさめるように、二度三度と同じ事を云った。「ほたる」は、1週間前は、確かに乱舞していたようだ。自然の中の1週間は大きい。今年は、春の花の開花も1週間の差があったし、台風の日本上陸も、いつもより早かったのだ。自然の中のそれぞれの営みは、この1週間に適合して動いている。しかし、我々は「こよみ」通 りで考えて行動している。このあたりがせっかく「ほたるの乱舞」のシーンを見ることが出来なかったのである。来年は、必ず見ようと思いつつ帰荘したのである。朝の食卓に「おいしくできた夏ミカンのジャム」を出して「ほたる」のかわりにしよう。
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