「キリのカーテン」は次から次へとうまれ、そして消えていった。
梅の花は満開の見ごろで、雨の中でも小鳥たちがじゃれあっている。
「うぐいす」の声も聞こえるが、まだ本調子ではない。
「キリの中にうかぶ山荘」、消えてはあらわれる「梅の花」、「うぐいす」の声。
春らしき「ふんいき」を俳句にしようと「メモ帳」とエンピツを持ったが、風流なのは「そこ」までで、「キリ」の世界の中で「ただ」見入るのであった。
雨はたっぷりと降って木々に水分を与え、午前中にはやんだ。丸一日半、「むせぶような山荘」は紅い夕陽をうけて、別なふんいきを見せはじめた。
天気のうつりかわりが景色(けしき)を変えてくれる…………自然のプレゼントだ。ときには「ムゴイ」ことも与えるが、静かに「それを受け入れる」気持ちがあれば、次から次へと「あきさせない」ドラマを見せてくれる。
ディナータイムとなり……レストランのライトがついた。
坂道の誘導燈が「えんりょがち」に足もとをてらし、ファミリーを夕食へとさそう…………
…………さあ、シェフの出番である。…………