昨年中は幾つかのマスコミに紹介されて、いつのまにか「朝食のうまい宿」として評判になった。
本来、フランス料理が本職であるシェフとしては、和食・洋食のバイキングスタイルの料理はどちらかというと「ついでに作る料理」として、自分の気持ちの中では「趣味…」みたいなもので遊びである。「趣味」で作るので、材料さえあればアイデアとおふくろに食べさせてもらった味を思い出し、懐かしさも加わってメニューの数が自然と増えていくのである。
旬の野菜を運用するのは、やはり「おふくろの味」が一番つくりやすい。
大晦日の「年越しそば」…「きのこの味」でさっぱりと作る。元旦の日だけしか献立に載らない「黒豆」と「レンコンのシロップ煮」は、自分でも満足する出来ばえであった。
毎日作るものではないので「おいしく仕上がる」と嬉しくなり、調理場の中でスキップをふむ。料理を楽しんで作り、その料理を「おいしそう」に召し上がる「お客様」を「カーテン」のすき間から眺めるのも料理人しか味わえない「ヒミツ」のよろこびである。
「シェフ、いつまでも元気でこの料理を作り続けてね」…と、お帰りの際のひとことがうれしく、今年も「ガンバルゾ」と誓うのである。